今回ご紹介するのは淡路島で藍染めにチャレンジされている移住者です。
淡路島には多くの移住者がいて、農業に従事されている方も数多くいらっしゃるのは知っていましたが、淡路島で藍を育て、あの独特な美しい青を作り出そうとしている方がいるというのは今回初めて知りました。
小高い丘の上にある工房に到着すると、根岸さんご夫婦が温かく迎えて下さいました。
目の前は海。山も海も身近に感じられる淡路島らしい空気が流れています。
工房の中には、収穫した藍、そして藍染めに使うと思われるシンクなど、初めて見る景色が広がります。
藍染めの知識が全くなかった私ですが、根岸さんご夫婦にいろいろと教えて頂き、この藍という素晴らしい植物に対する理解が随分深まった気がします。
@移住&藍染めを始めた経緯
ご主人は東京都出身。大阪での生活が長く、洋服のリフォームの仕事をされていました。一方の奥様のご出身は奈良県で関西を中心にイベントのデコレーションの仕事をされていました。
大阪で出会ったお二人、当初何となく京阪神に近い淡路島に興味をもって足を運んだところ、島で視界に入ってくる山や海の鮮やかな色にすっかり魅せられてしまったそうです。ご結婚と同時に淡路島に移住、食べ物や生活スタイルが一変し、「寿命が延びた気がする」とも仰ってました(笑)。
当初は都会と行き来しながらの移住生活をされていましたが、自然に根ざした循環型の”日常” ”仕事” ”遊び”を実践するという想いから無農薬、無化学肥料での土いじりを始め、タマネギや米、そして藍を育て始めた時、その大きな可能性に気づいたといいます。
一口に青と言っても様々な青がありますが、藍の青は深みと品があって独特です。他の草木染では絶対に出せない色ですが、その一方で草木染と組み合わせることで様々な色の表現が可能になります。例えばタマネギ染めは黄色ですが、藍染めと組み合わせれば緑が表現できるというように。
又、藍は食べることもできます。抗酸化作用があり、ポリフェノールはケールの約4倍、昔は漢方にも使われていたとか。
"藍×衣"はもちろん、"藍×食"、"藍×住"、藍を他の様々な製品と掛け合わせることで、家を彩り、生活を豊かにする新たなプロダクトを作り出すことができるかもしれない…。
A藍染め
本格的に藍染めのスキルを蓄えるべく、ご主人は昨年10月から今年3月まで半年間、藍染めで有名な徳島県で修行され、今年4月から淡路島に改めて根を張り始めました。
タデ藍を製藍した「すくも」を使い、伝統的な技法である天然灰汁発酵建てにより染料をつくります。
化学薬品を一切使わず、自然界からとれる原料のみを用いるため、布やそれを身につける私たちだけでなく、環境にとっても非常に優しい染色方法なのです。
「すくも」に、灰汁(木灰に淡路島の汲み水をかけとった上澄み液)を加えると、藍の成分が溶け出していきます。
さらに藍の菌のえさとなる淡路島の地酒やオーガニックのふすまを加え、10日ほどかけて染料に仕上げます。
先程シンクの中にあったのは、こうした伝統的な製法で建てられた藍だったのです。
伝統的な製法以外にも、藍の乾燥葉を発酵させた染料や、沖縄の沈殿藍の製法を用いてた染料づくりなど、様々な試行錯誤を重ねておられました。
B藍が引き寄せた交流
藍という核ができたこと、そして淡路島に根を張ったことで、交流はさらに広がっていきました。畑を貸してくれる人が現れ、飲食店とのコラボが実現し、陶芸/木工/革工等モノづくりに携わる方々とのご縁にも恵まれました。
実際の畑も見せて頂きました。1件目は飲食店やゲストハウスも兼ねた「食のわ」さん。庭の一角が畑になっています。
藍の葉を使ったジェノベーゼパスタを頂きました。
青い色のパスタが出てくるかと思いきや(笑)、そうではありませんでした。何のクセもなく、むしろとても美味しいパスタで、しかも健康にいいとなればアリですよ、これ。
食後、ちょうど収穫予定の畑があるとのことで、そちらも見学させて頂きました。
無農薬、無化学肥料にこだわっているので、どうしても雑草が生えてしまいますが、こちらの畑を貸して下さっている方が一部既に草ぬきをして下さっていて、スムーズに作業が進んでいきます。
淡路島は雨が少なく、多くの水を必要とする藍栽培には向かないとも言われますが、藍を栽培しているからこそつながったご縁を直に拝見し、大いに可能性を感じた次第です。
根岸さんご夫婦は淡路産の藍を「おのころ藍」と名付け、
・生活を豊かにする新たなプロダクトを製品化
・手しごとによる丁寧な作業の積み重ねをストーリーとして伝えるモノづくりを推進
・ご縁がつながった方々に喜んで参加してもらい、農福連携等さらなる交流を仕組み化
といった大きな夢に向かって日々創意工夫を重ねておられます。私自身、何だか大いに元気を頂きました。来年3月には作品の展覧会も予定しているそうなので、また陣中見舞いに伺おうと思います。
(T)