「じごくのそうべえ」、「祇園祭」など数々の絵本を作り続けてきた田島征彦さんが、この度淡路島に住む少年2人の友情をテーマにした絵本「ふしぎなともだち」を出版されました。話題の傑作をいち早く紹介します。
モデルとなったのは、かーくんこと治井一馬さんと同級生の小田陽介さん。絵本では、「やっくん」と「ゆうすけ」として登場しますが、2人は保育園からの付き合いで、29歳になった今でも共に生きる仲間として友情が続いています。
絵本の中では、小学校に転校してきたゆうすけが知的障害のある自閉症のやっくんと出会います。初めは驚きや戸惑いを感じながらも、他の友達のやっくんとのつきあいを見て、だんだんやっくんを理解します。
みんなは、やっくんがいけないことをしたらやさしくおしえている。
大声をだしたるときは、おちつくまでまつ。やっくんをみんなの中へつつみこんでいうようだ・
そんなふうに、やっくんを認める仲間たちを通し、自分もやっくんと仲よくなっていく様子が描かれています。
その友情は、大人になってからも変わりません。メール便の配達をするやっくんと郵便配達員になったゆうすけ。
配達中に出会う二人はやはりずっと友達で、仕事で失敗したゆうすけをやっくんがやさしく慰めます。
「おおた ゆうすけくん はい おしまい。
おおた ゆうすけくん はい おしまい。」
地元のひまわり作業所に勤めながらメール便の配達をするかーくん。時に配達先を間違えるようなことがあっても、地域の人に見守られながら、笑顔と一緒にメール便を届けています。実際に郵便配達員になった陽介くんも大好きな淡路島で働きたいとこの仕事を選びました。そして「小さい時から一緒にいたから、かーくんが障害者であるという感覚はない。」と言います。
(少年時代のかーくん、陽介くんとクラスメイト)
一方で、作者の田島さんは、美大時代に暮らした京都では障害児が健常児と同じ教室で学ぶというのを聞いたことがなかったそうです。淡路島に移住して以来、町で障害を持つ人たちを見かける機会が増え、いつか絵本の制作を通して「互いの違いを認め、共に生きることの大切さ」を訴えたいと考えていました。
3年にも及ぶ取材や構想、多くの人々の協力を得て出来上がったというこの作品。田島さんの独特な染色による味わい深いこの絵本には、違いがあっても友達になれるというメッセージが色彩豊かな淡路島の景色とともに表現されています。
ぜひお手にして読んでみてください。やさしい心になれることでしょう。
絵本「ふしぎなともだち」(くもん出版)
(by Ume+取材協力 小田美根子さん)